看板工事の現場で、必ず一度は出る議論があります。「ビスとコーキング、どっちが一番強いの?」昔からよく耳にする言葉があります。「コーキングは強い」「ちゃんと付く」「落ちたことがない」これは決して間違いではありません。実際、正しく使えばコーキングは非常に優秀な材料で、長年現場を支えてきました。一方で、「強い」の意味を少し整理して考える必要があると感じる場面も増えています。今日は調べてみました。
1.なぜ「コーキング最強」と言われてきたのか・・

コーキングが高く評価されてきた理由は、とてもシンプルです。
・面で接着できるため、初期固定力が高い。
・下地を選ばず施工できる
・施工が早く、仕上がりもきれい
・振動や伸縮に追従できる
特に小型看板や内照式の軽量パネルでは、「ビスを使わなくても問題なかった」経験を持つ職人方も多いはずです。
この成功体験の積み重ねが、「コーキングは強い」という信頼につながってきたのでしょう。
■サイズと条件が変わると、考え方も変わる
例えば、900×1800mmサイズのアルミ複合板を、地上約3mの位置に設置するケースを考えてみます。
このサイズになると、
・風圧による引張力
・自重によるせん断力
・経年劣化による接着力低下
といった要素が無視できなくなります。
ここで大事なのは、ビスとコーキングは「役割が違う」という点です。
2.ビスとコーキングの役割の違い

一般的な目安として・・
・コーキング(変成シリコン)・・・初期接着力は高いが、経年で性能が変化しやすい
・ビス固定・・・引張・せん断に対する性能が数値で管理でき、再現性が高い
ステンレスビス1本の引抜耐力:おおよそ200〜300N(下地条件による)。8本使用すれば、単純計算で1600〜2400N相当。
コーキングは:塗布量や下地状態で結果が変わりやすく、数値として説明しづらいという特徴があります。
例えば》
900×1800mmの看板に、8点・総量160mlのコーキングを使った場合、理論上の保持力は5000kg以上という計算も可能です。
この数字だけ見ると、「ビスより強いじゃないか」と思われがちです。
ここには、大きな落とし穴があります。
■ビス固定の強度はどれくらいか?
一般的なビス(Φ4.0〜5.0mm)を下地に正しく効かせた場合・・引抜強度:1本あたり300〜600kgf(目安)
900×1800mmの看板を、8本のビスで固定すれば、合計で2000kg超の保持力になります。
さらに重要なのは、1本抜けても、他が耐える。徐々に緩むため予兆があるという点。
■コーキングの弱点は「壊れ方」
コーキングは・・・
・紫外線
・熱
・下地の粉化
・塗膜剥離
これらの影響を受けやすく、一部が剥がれた瞬間に連鎖的に全剥離します。
保持力は、ある瞬間に「残り0」になります。
つまり、落下するまで予兆がほぼありません。
3.「併用」が一番バランスが良い理由

現場でよく採用されるのが・・・
・ビス:安全を担保する「保険」
・コーキング:密着性と振動対策
という考え方です。
900×1800サイズであれば、「ビス8本前後、コーキングは点付けまたは周囲補助」。この組み合わせは、施工者・管理者・施主のいずれにとっても、説明がしやすく、記録にも残しやすい方法ですね。
4.万一の事故と保険の話

看板業者は損害賠償保険に加入しています。
・請負業者賠償責任保険
・PL保険など・・
これらは共通して、「適切な施工が行われていること」が支払い条件のようです。
■事故後、保険会社が必ず確認するのは
・機械的固定(ビス)があるか
・本数・配置は妥当か
・下地に効いているか
・施工記録が残っているか・・・
のようです。
コーキングのみ施工や、明らかな本数不足は、
・重過失
・保険金減額
・最悪、不払い
になる可能性もあるとのこと。危険ですね!!
5.まとめ
有能なのは「ビスかコーキングか」ではない。
使い分けられる施工が有能。
・落下防止は必ずビス。
・コーキングは補助
看板は「付けばOK」ではないことは周知されています。
何かあった時に、胸を張って説明できる施工か。
それが、看板屋のプロとしての判断基準だと考ることが最善策です。
保険対応に加入しているからといざという場合には、最善の誠意をユーザー様にもお届けできると思っていましたが、難しくなるケースもあるようでした。
今回、調べた結果は、合理的な施工判断が説明できるかどうかが重要になることが、理解できました。
ということで、ビスもコーキングも必要に応じて使い分けることと、どちらにも別の役割があるということの再確認でした。
熟練の職人方は、重々理解しておられると思いますが、新人職人さん・営業マンさんには、覚えておくことが必要だと考えました。
何かの参考になれば、幸いです。
ありがとうございました。
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